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運命の書庫―4―

四話目:最終話 ――― …



「マスター。…マスター?聞いてます?」
「…?」
 ぼんやりとした意識の中に誰かの声を聞き、目を開ける。
 目を開ければそこは整然と並ぶ煉瓦に囲まれた何処かの部屋の一室。周りをキョロキョロと見回してみるが居るのは自分と緑の髪の少女が一人。

…今一つ頭が働かない。

「あれ…?俺?」
 ――― 今まで、何処で何をしてたんだっけ?
「どうしました?」
「?俺、今まで何処で何を…あれ?」
 ―― そういえば、俺の名前は何だっけ?

「もう!またマスター忘れちゃったの?そんな何度も記憶喪失に何度もならないでくださる?」
「!」
 混乱した意識を突如引き戻したのは少女の声。その声と呆れ顔に俺はハッとする。
「…あ、そっか俺…。」

 記憶喪失、だった。



 数年前のある日。俺は今仕えている風領の土地に呆然と立っていた…らしい。当初の記憶は実に曖昧だった。名前も、何であの場所に居たのかもさっぱりわからない。ただ、一つ覚えている事と云えば「誰かと大切な約束をした事」だけだった。
 しかし大切な約束といっても、何時誰と交わしたものかすっかり抜け落ち、実におぼろげなものだ。そんな俺は取りあえず、俺を保護してくれた人の勧めで風領の霊峰に住む風の竜に弟子入りをした。そこで様々なものを学び、様々な人に出会った。
そして現在は風領の主である女王の密命を受け各地を廻って仕事をしている。

「もう。マスター本当に大丈夫?」
 心配そうに自分を見てくる少女。彼女はラファル。俺のパートナーの一人で翼あるものの一族の者だ。
「久々に物忘れなんて。お疲れです?長旅でしたものね。」
  疲れている。そう云われてしまえばそれもあるかなぁと思った。
女王の命で諸国の状況を把握する旅は一年以上続いていた。のんびりやっていたとはいえ、決して楽ではない旅だった。それがやっと終わって自国に帰って来れたから気が緩んだのだろう。
そのせいだろうか。久々にあの夢を思い出したのは。
「…いや。ちょっとだけウトウトしてただけ。」
 大丈夫だからと笑顔を見せてやればラファルはそうですか?と小さく首を傾げて見せる。
「あ、そうだ。マスター。今日騎士団長様の所にイオ様とテラ様がいらっしゃるらしいですよ?」
「あいつらが?」
 イオと云うのは風の竜がどこからか拾ってきた子供で、赤ん坊の頃から良く知っている。いわば弟の様な存在だ。そしてそのイオが随分と気に入っているのが、騎士団長の息子のテラ。というわけだ。
 今日も騎士団長の所に二人がいると云う事は、恐らくテラが父親に何かしら用事が有ったのだろう。しかし何てタイミングだ。
「ほんじゃま、女王に報告終わったら二人にも会いに行きますかね。」
「はい!」
「んじゃ、ちゃっちゃと女王の所に行くかぁー。」


 何時か何処かで交わされた大きな約束。

 それは今は決して思いだす事は出来ない。

しかし、それは時を経て還ってくる事となる。
真実の名を取り戻した、その時に。



                  終
 
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Author:海和さい
竜と魔法の世界をつらつらとやっております。

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